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IBP-WUFI Seminar2011を開催しました

2011年4月11日(月)に東京都港区において弊社((有)イーアイ)とドイツ・フラウンホーファー建築物理研究所が主催するIBP-WUFI Seminar2011を開催しました。会場には、全国各地から40名が参加しました。


今回のIBP-WUFIセミナーでは「WUFI の計算結果の効果的なプレゼン方法について知りたい」とのユーザーからの要望をふまえて、内断熱と外断熱、高気密・高断熱、パッシブハウス等の正しい建築(断熱・気密)工法について取り上げました。


WUFIセミナーは、最初にお茶の水女子大学名誉教授田中辰明博士より「WUFIの必要性」についてご自身の体験を含めて紹介がありました。
田中博士は、方丈記では1185年(元暦)の大地震の事が記されています。「山はくづれて河を埋み、海は傾きて陸地をひせたり」、そして旧約聖書コヘリトの言葉1-9に「かってあったことは、これからも起こる。太陽の下、新しいものは何ひとつない」(日本聖書協会、新共同訳)というのがあります、と紹介し、今回の震災に関して歴史から学ぶことの必要性について話しました。


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田中辰明 お茶の水女子大学名誉教授


また、30年前に建設されたハイブリッドソーラーハウスの自宅を紹介し、外断熱で建てられた住宅において震災以降は、暖房を使わない暮らしをしていると話されました。


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また、カビ発生のメカニズムを紹介するとともに、カビの発生を予測することができるWUFI(ヴーフィ)の重要性を話されました。


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会場の参加者は、田中辰明博士の話に耳を傾けしっかりと聞いていました。

田中辰明博士の「WUFIの必要性」講演後、ドイツから来日したフラウンホーファー建築物理研究所の田中絵梨研究員が登壇しました。田中絵梨研究員は、お茶の水女子大学の田中辰明研究室に所属し2003 年に修士課程を修了(生活科学修士)。その後、2 年間、DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてフラウンホーファー研究所で省エネルギー住宅について研究した後、同研究所に勤務。2006 年より、WUFI が開発された部署で、主に日本向けのWUFI の作成に従事しています。今回の来日にあたって、ドイツ国内では大震災後の放射能汚染について連日報道され、周辺からは日本行を止めるようにとの意見もありましたが、来日していただきました。


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フラウンホーファー建築物理研究所(IBP)田中絵梨研究員

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最初の講演は、「ドイツにおける建築物理とWUFI」をテーマに、1)フラウンホーファー建築物理研究所(IBP)の概要、2)湿気の影響、3)これまでの評価方法、4)WUFIについて話しました。


最初に、フラウンホーファー建築物理研究所を束ねている欧州最大の応用研究機関、フラウンホーファー研究機構について紹介がありました。フラウンホーファー研究機構は、ドイツ国内はもとより、北米、マーレシア、シンガポール、中国の60の場所に80の研究施設を抱えています。日本にもフラウンホーファー研究機構・日本代表部(代表 ロレンツ グランラート博士)があります。フラウンホーファー建築物理研究所(IBP)は、80の研究施設の中の3つの研究所(シュトゥットガルト、カッセル、ホルツキュルヘン)にあたります。


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フラウンホーファー研究機構

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ドイツ国内のフラウンホーファー建築物理研究所

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会場から講師の田中絵梨研究員への質問

田中講師は、これまで湿気の害では冬型結露が重視され定常計算(Glaser 計算法)で判断されてきました。しかし、定常計算では雨水、夏型結露、日射、建材内の毛細管輸送(液水の移動)が考慮されません。現在では、ドイツ工業規格に定常計算(Glaser 計算法)の限界が記され、実際の気象条件のもとでの建物部位の非定常の熱湿気性状を評価するためにWUFIのような近代的な計算を行う必要があることが明確に示されました。


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これまでの評価方法

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WUFI Worldwide 世界のWUFIユーザー


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WUFIの日本窓口 (有)イーアイ

昼食時間中に、期間限定WUFI Pro5.1Verを持参されたノートパソコンにインストールしました。WUFIは、Windows用に開発されたプログラムのためMacでは動きません(Windowsをインストールした場合は動きます)。
昼食後、13時から各自が持参したパソコン上でWUFI Pro5.1Verを動かしました。


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講演3.「WUFIの使い方」 IBP田中絵梨研究員



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パソコンにインストールする参加者

WUFIでは、様々な構造、エリア、室内条件に合わせて、壁内における熱と湿気の挙動、結露・カビの発生、錆や腐朽について計算・予測ができます。
今回は、札幌市に在来木造工法の住宅を想定し、「防湿シート(PEシート)」あり、「防湿シート(PEシート)」なし、「防湿シート(PEシート)」に穴が開いている場合の三ケースについて計算しました。


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計算例


WUFIに必要な物性値は、基本物性値として密度・空隙率・比熱・熱伝導率・水蒸気拡散抵抗係数、吸湿性のある建材に必要な湿気に関する物性値として、平衡含水率曲線・水分拡散係数(吸水)・水分拡散係数(分配)となります。


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物性データ

WUFIに搭載する日本の建材データ(物性値)は、2006年に財団法人 建材試験センターがフラウンホーファー建築物理研究所との技術協力協定提携に基づき行っています。今回のセミナー開催にむけて建材試験センターが測定した8種類の日本の建材データが用意されました。日本の建材データは、WUFI Pro5.1Verから使用できます。また、5.2Verへのアップデートの際には新たな建材データと一緒にデータベースに加えられます。


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8種類の日本の建材データ



5.2Verへの無償アップデートの際には、世界のデータベース(ドイツ、北米、オーストリア、ノルウェー、スウェーデン・ルンド大学)に、新たな日本の建材データ(物性値)が加わる予定です。


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世界のデータベース(ドイツ、北米、オーストリア、ノルウェー、スウェーデン・ルンド大学)


参加者は、持参したノートパソコンを使って、WUFI体験をしました。


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WUFIをパソコン上で動かす参加者

WUFI Pro5.0Verから「防湿シート(PEシート)」の施工が完全に行われていない状態(コンセントや配管、配線の穴が開いている場合)における計算ができるようになりました。


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「防湿シート(PEシート)」に穴が開いている場合の計算

また、カビの発生について予測するWUFI Bioがバージョンアップしました。WUFI Bio3.0は、フラウンホーファー建築物理研究所のホームページから無料でダウンロードできます。WUFI Proのホームページ
からDownloadsに入り、Software / WUFI / DownloadsのPostprocessors、WUFI-Bio 3.0をダウンロードしてください。ただし、WUFI Pro5.0以降のバージョンから使えます。4.0Verの方は、5.1へのバージョンアップをご検討下さい。


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WUFI-Bio 3.0のダウンロードサイト

WUFI Bioは、ダウンロード後に、WUFI ProのコマンドバーにBioのアイコンが表示されます。


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WUFI Bioのアイコン



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WUFI Bioの計算結果-1(札幌 「防湿シート(PEシート)」あり)


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WUFI Bioの計算結果-2(札幌 「防湿シート(PEシート)」なし)


WUFI Bioで計算した結果(カビの考察)は、結果を考察するポストプロセッサーに表示されます。札幌で「防湿シート(PEシート)」ありの場合は、青色が表示されますが、「防湿シート(PEシート)」なしの場合は、赤色の表示がされます。


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結果を考察するポストプロセッサー



続いて、講演4としてフラウンホーファー建築物理研究所・田中絵梨研究員からWUFIの計算結果について説明が行われました。


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講演4.「WUFIの結果の考察」 IBP田中絵梨研究員

WUFIを使って計算するときは、はじめに、どういうことに気をつけて結果を見なければいけないかということを確認しておきます。まず、湿気がたまっていないかどうかです。それから、建材の含水率が高すぎないかどうかです。建材の含水率が高いと、熱伝導率が高くなってしまい、断熱の効果が少なくなってしまいます。それから、錆びや腐敗、凍結などの問題が起きる可能性があります。また、室内表面での相対湿度が高すぎるとカビが生える危険性があり、外側の表面で相対湿度が高いと、藻類やカビなどが繁殖して壁が汚れてしまったり、錆びや凍結、腐敗の危険性があります。


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メモ 湿気の害

木造の屋根について計算したモデルはこの図のような、木造の屋根です、北向きに50度傾いている屋根で、外側にはアスファルトシートがあるとしました。
アスファルトシートはほとんど湿気を通さないので、Sd値は50です。つまり、このシートの透湿抵抗は、50mの空気層の透湿抵抗と同じ、ということです。
室内は、温度が20℃から22℃、湿度が40%から60%で動くものとしました。室内側の防湿シートのSd値をいくつか変えてシミュレーションしました。


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木造屋根の温湿度

表面の湿気の通しやすさを表すSd値は、ドイツではよく使われるのですが、日本ではまだ使われていないようです。Sd値とは、水蒸気拡散抵抗係数ミュー値に材料の厚みをかけたものなのです。ミュー値とは、材料の透湿抵抗の大きさを表す物性値です。日本で使われているのは、材料の透湿抵抗そのものを表すのですが、ミュー値は、材料の透湿抵抗が、同じ厚みの空気層の透湿抵抗に比べてどれくらい大きいか、ということを表します。材料の透湿抵抗は、温度や大気圧によって変わりますが、ミュー値のいいところは、そのような影響も考慮されていることです。


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μ(ミュー)値とSd値について

木造住宅において、高断熱・高気密化がすすむと、室内で発生した水蒸気や外部からの雨水や湿気の侵入による、結露やカビ、錆びや凍結、腐敗の危険性があります。


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カビの写真

下記のグラフは、カビが生える、温度と相対湿度の条件を表しています。LIM曲線というものです。建材の種類によって、カビが生える条件は変わります。
緑の線は、生物が利用できない建材のものです。青い線は、生物が利用しやすい建材のものです。赤い線は、生物が生きるのにちょうどいい、栄養が十分な建材のものです。
国際的な規格であるIEA Annex14やドイツの規格では一般的に、相対湿度が80%以上になると、カビが生える危険性がある、となっていますが、実際には、相対湿度が80%より低くてもカビが生える危険性があるので、詳しく調べる必要があります。


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カビ 基質の分類

WUFI Seminarの最後に、イーアイ代表の堀内正純が日本での計算事例とWUFIの使いやすさについて解説しました。
WUFI Pro日本版は、開発・発売元=ドイツ・フラウンホーファー建築物理研究所。建材データベース(物性値)=財団法人 建材試験センター、技術指導=お茶の水女子大学 田中辰明名誉教授、販売=有限会社イーアイ(EI,Ltd.)の4者が共同で開発した非定常熱湿気同時移動解析プログラムです。


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講演5.日本の計算事例 有限会社イーアイ 代表取締役 堀内正純

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講演するイーアイ代表 堀内正純

最初に、寒冷地で防湿シートを施工しない場合の壁内(GW及び合板)への水分の蓄積について、WUFIの計算を動画(フィルム)で紹介しました。WUFIでは、壁内における熱と湿気の挙動を動画で見せることができるため、熱や湿気に対する専門的な知識を持たないユーザーや建築関係者にも理解がしやすくなっています。


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WUFIの計算を動画(フィルム)で紹介

WUFIにより、全国各地(842地点)に建てられる建物(木造やRC造)の耐久性や結露・カビ・錆び・凍害・腐朽などの発生を事前に予知できます。計算(シミュレーション)にあたっては、建物の構造(断面)、方位や勾配、仕上げ材料、建設地、室内条件を事前に登録する必要があります。



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壁の構造を決めます(左<外部>から、外装材・通気層・防水シート・フェノールフォーム・合板・グラスウール・防湿シート・石膏ボード)


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計算する建物の方位と高さ、屋根の場合は勾配を決めます(日本語のヘルプで解説)


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建設地を納沙布岬から沖永良部島まで842地点の気象データから選択できます

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室内条件は、任意の設定のサインカーブ、欧州規格、米国のASHRAE160P規格から選択できます。計算時に、財団法人 建築環境・省エネルギー機構の「住宅の省エネルギー基準の解説の非定常計算による防露措置の判断方法により解析」することもできます。


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財団法人 建築環境・省エネルギー機構の「住宅の省エネルギー基準の解説の非定常計算による防露措置の判断方法」

WUFIでは、木造だけでなくコンクリート造の断熱についても非定常計算ができます。ドイツでは、これまで湿気の害では冬型結露が重視され定常計算(Glaser 計算法)で判断されてきました。しかし、定常計算では雨水、夏型結露、日射、建材内の毛細管輸送(液水の移動)が考慮されません。現在では、ドイツ工業規格に定常計算(Glaser 計算法)の限界が記され、実際の気象条件のもとでの建物部位の非定常の熱湿気性状を評価するためにWUFIのような近代的な計算を行う必要があることが明確に示されました。


非定常熱湿気同時移動解析プログラム"WUFI"は、木造住宅が高断熱・高気密化がすすむと壁の中で発生する様々な弊害(結露・カビ・錆び・凍害・腐朽など)を事前に予測します。特に、これまで木造住宅の外張り断熱(外断熱)を行ってきたメーカーや工務店、設計士が、より高断熱・高気密化、パッシブハウスを目指すとき必要な計算(シミュレーション)です。横浜に弊社がプロデュース)した2×6プラス外張り(フェノールフォーム板)断熱のパッシブハウスがあります。この時も、壁の材料を選定する際にWUFIによる計算(シミュレーション)が行われました。




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横浜パッシブハウス

最近は、パッシブハウスという言葉が一般的になりましたが、日本では、パッシブハウスは、2005年に来日したスウェーデンの環境建築家・ハンス エーク氏の無暖房住宅(Houses Without Heating Systems)としてが紹介されました。スウェーデン イエテボリ市郊外のリンドース地区に建設された20戸の低エネルギーテラスハウス(20 low energy terrace houses in Gothenburg)は、壁の厚さ43cm、10層の構造で建てられていました。このような、複雑な多層構造の壁体も計算(シミュレーション)することができます。



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リンドースの無暖房住宅

住宅で使われる建材や断熱材、メンブレン(シート)には、それぞれ異なった物性値があります。設計や施工にあたってそれぞれの物性値を理解して設計や施工を行うことが必要です。


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メンブレン(シート)の種類による使い方

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断熱材の種類による使い方

これまで、建設される地域(北海道から沖縄)により異なる気象条件(雨量や湿度、日射量など)にあった材料を選定、特に新しい建材や断熱材等を使うときは、屋外に建てた実験棟や人工気候室などでの実験が必要でした。しかし、そのためには時間と多額な費用が必要でしたが、WUFIにより簡単に計算(シミュレーション)が可能になりました。


講演時間が予定より早く終了したため、会場からの質問を受けました。


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会場からの質問に答えるIBP田中絵梨研究員

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フラウンホーファー研究機構 日本代表部代表 グランラート博士

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非定常熱湿気同時移動解析プログラム"WUFI"のパンフレット
 


  • WUFI Ver5のパンフレット(別ウインドウ:pdf:1.7Mb )
  •  

     

     

    投稿者 日本パッシブハウスセンター :2011年4月18日

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